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ところでものをつきつめて考えるのは自滅的思考です。
失敗や挫折を自己の欠点や価値のなさにつなげる悲観主義者には、ヘルシーエイジングの実現はなかなか難しいでしょう。今度の失敗や挫折は偶然の産物であるが、きっと糧になるだろう。
人間の回復力、潜在力は無限なのだから」と思える楽観主義者のパターンに置き換えてゆくことで、加齢に伴って訪れるさまざまな不調や変化を、ごく自然体のままで乗り切れます。あなたはこうして、「従容として」眼や視覚の加齢変化を受容する、楽観主義者に変身できるはずなのです。
眼が覚めた時から、夜眠るまで、人間は眼から入力を得ています。眠っていても、脳の視覚中枢は「夢」を見ていれば働きますが、起きている時間だけ計算しても、おそらく人生の少なくとも3分の2は視覚入力を得て生活していることになります。
寿命が60年だとすると、約3万時間は視覚を利用しているのです。「眼が疲れて仕方がない」「眼が痛くなる」という方に、随分眼を使っているでしょうと訊きますと、でも、よく聞いてみると、テレビを見たり、それをあまりやらない人でも、散歩もすれば、孫と遊んだりもするとおっしゃるのですから、ものを見るというのは、本や新聞を読むことを言うのではありません。
いろいろな距離の対象物を、いろいろな背景の中で、対象物も動けば自分も動くという、非常に複雑な視環境の中で見ていることを指すのです。そういう環境下でものを見る時、われわれは、以下のようなさまざまな眼球運動を用います。
この報湊開散運動をあわせてバージェンスと総称します。話が少しややこしくなりました。
これらの各眼球運動の中枢神経回路はそれぞれ基本的には独立していて、異なる回路を用いています。そのうち一種類の眼球運動ばかり利用したり、いつも同じようなパターンの組み合わせばかり利用しているのが、現代人の日常生活ではないでしょうか。
眼から一定距離に固定したパソコン画面の中で、入力作業をしたり、スクロールしながら文書を確認したり、ケータイでメールのやりとりをしたり。これらは、いずれもパターン化した眼の使い方です。
眼の使い方がパターン化しているということは、ものの認識もパターン化しているということです。同じような眼球運動の組み合わせで、同じような認識を繰り返すということは、脳の同じ回路ばかりを使っていることにほかなりません。
人は本来もっともっと豊富な脳の機能を有しているのに、これでは、そのほんの一部しか使っていないことになり、これはまことにもったいない話だと思います。脳の機能は、仮に脳梗塞などの病気などで、一部の機能が廃絶しても、訓練やリハビリテーションによって、他の回路をつくる潜在力があることも、種々の研究で肯定されていますが、これだって使わなければ錆付いてしまう可能性があります。
多彩な機能を存分に使うということは、それぞれ違う脳の回路を使うことになり、脳の代謝にとっても良いだけでなく、関心領域を広げることにもつながり、人の精神活動の質の向上にも大いに役立つはずです。そこで、私は、散歩をしながらきょろきょろ、通勤や買い物の行きかえりにもきょろきょろすることを、あちこちで勧めています。
そういう行動をあえて行うことで、広大な脳のあちこちが自然と鍛えられて、関心領域も広がり、我々の生活環境の中で新たな発見も生み出されるというわけです。この「きょろきょろ運動」が、どれほど人間の脳にとって有益なのかという「科学的根拠を示せ」と言われると少し困りますが、ここで言いたいことは次のことなのです。
どんなことでも、過度に長く続ければ能率の低下、心身の疲労につながります。健康な人でもそうなのですから、心身に不都合があれば、なおさらそうなります。
パソコン作業を1時間継続したら、少なくとも10分は休むよう厚生労働省が勧告しているのも、当然そうした背景を考えてのことです。特に同じパターンの作業や思考回路を長く続ければ、それこそ眼の一定の回路を酷使することになり、能率の低下、心身の疲労をきたすのは当然です。
短い睡眠をとる、眼の周辺を温めるといった手当ても有用だとするデータがあります。でも、このようにして休めと言われても、なかなか生活の中では容易ではありません。
だから、きょろきょろ運動のように、色々なパターンで脳の回路を使う、そして使いすぎの回路には休息を与える、ということを心がけてはどうか、ということなのです。ちなみに、「眼を動かして、眼の筋肉を鍛えると眼が良くなる」という人がいますが、なに科に行けばいいの?従来病気は、眼の病気、耳の病気、脳や神経系の病気、骨や関節の病気、皮層の病気、消化器の病気、循環器の病気、呼吸器の病気、泌尿器の病気、生殖器の病気のように、臓器器官別に分類され、診療科もそれに対応して分かれ、医学教育もそれに従って行われてきました。
それときょろきょろ運動は違います。このごろは健康志向が強くなって、いろいろな人(大抵は非医師)が、なにか独自の方法を考えついて健康に良いと宣伝しています。
それを、雑誌やテレビなどが取り上げたりもします。それは、食品であったり、体操であったり、ゲームのような課題であったりいろいろです。
それなりの根拠や理論が示されるものもありますが、「眼を動かす運動をして、筋肉を鍛える」というのは、有り得ない話です。眼を動かす筋肉(外眼筋)は通常の骨格筋のように、使って鍛えられるようにはなっていないからです。
筋肉の性質が違うのです。重症筋無力症や甲状腺眼症、あるいは斜視の人などに、「眼を動かして筋肉を鍛えなさい」などという民間療法を勧めたりするのは、百害あって一利なし、疲労させて症状を進めさせるだけでしょう。
ところが、臓器器官別では分類しきれない色々な病気の存在が知られるようになりました。皮層、粘膜や眼球に炎症を繰り返し引き起こすベーチェット病もそうですが、免疫系が関与する病気はどの臓器も侵す可能性があります。
神経に関係する病気もそうです。神経系は大脳や脳幹、脊髄だけでなく、その支配は全身に及んでいますし、精神疾患も中枢神経系の問題と位置づけられます。
眼や視覚はまさに中枢神経系そのもので、私は眼科の中でもそういう視点で疾患を扱う「神経眼科学」が専門です。耳、とくに平衡感覚を扱う内耳から脳までは神経耳科の領域です。
だから、めまいでは、耳鼻咽喉科の検査と診断が必要になります。そうなると、なにか神経系の症状を持つ患者さんは脳外科に行けばいいのか、神経内科か、精神科か、心療内科か、整形外科か、眼科か、耳鼻咽喉科か、どこへ行くのが適切なのか迷う場合が生じます。
このような複雑に入り組んだ多彩な症状を有する場合は、どこかひとつの科だけでその科に関する症状だけを診ていると、判断を誤ることがあります。各科の医師が広い視野で診療に当たらないと、長い間誤診されることもあるわけです。
つまり、本当はどの科の医師も、患者さんを全体として捉えた診療を行なうべきですが、ないものです。
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